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酒井家庄内入部400年記念宝生流能楽公演『祝賀能奉納・祝賀能』

酒井家庄内入部400年記念して行われた宝生流能楽公演『祝賀能奉納・祝賀能』の奉納能を荘内神社にて、明治19年に奉納以来の舞台撮影をさせて頂きました。

報道関係の制限がある中、ご縁を頂き有難かったです。
事前の打ち合わせ、ロケハン、機材取り付けも当日に向け念入りに入らせていただきました。

祝賀能「翁」について

奉納能『翁』という演目は能にして能にあらずとも言われていて神事として、また祝いの舞として千歳、翁、三番叟の三人の役者が天下太平・国土安穏・五穀豊穣を祈願し舞うという古くからのめでたい舞です。
荘内神社様(以下荘内神社)にとっての奉納能「翁」は明治19年に奉納されて以来の歴史深い演目となっております。

感動と緊張の”本物”の美しさ

演目を舞う役者さんの後ろで日本楽器の和楽を奏でていたのは、人間国宝の大倉源次郎先生。
日本楽器は、風情ある日本の自然をモチーフにして音色が作られているそうです。
笛、小鼓、大鼓、太鼓、この四つで奏でられる音楽は、荘内神社の拝殿に鳥たちが集まってくるほど心地よく響いていました。

そして感動したのは、NHK「日本語で遊ぼう」や、公文式のCMに出演されていたあの美声の持ち主、野村萬斎さんにお会いできたこと!!
恐れ多くも「素敵な声で感動しました」とお声を掛けさせてもらうと「ありがとう」とのお優しいお言葉!!
佇まいも物腰も柔らかくとても素敵な方でした。

人間国宝の野村万作さんが見守る中、野村萬斎さんと息子の野村裕基さんの親子共演。
演舞中も親子の美しい掛け合いがあり、社内を遠く抜けていくような和楽の音色とともに、聞き惚れてしまいました。

野村萬斎さんからは
「この荘内神社で舞うのは背中には神様、目の前には大名様がいらっしゃいまして、とても厳粛な気持ちで演じさせていただきました」とお言葉を頂きました。
萬斎さんのお言葉通り厳粛な雰囲気を纏い、より神聖で凛と張り詰めた空気を感じました。

この舞台のためにいつもは閉め切っている境内の戸を解放し、『舞台』として整った美しい形になりました。

奉納能が始まると撮影メンバー全員緊張です。
失礼のないよう、また素敵な映像を撮れるように自分の持ち場での最高の画角を考えました。
今回は演舞中に足音を立てると失礼にあたるため、極力動かないように6台のカメラを使い、カメラマン5人で固定の位置からの撮影をしました。

境内下に敷き詰められた砂利の音にも注意を払っていたので、最小限の移動の際も緊張しながらで、靴を脱いで靴下で撮影していたスタッフもいました。

撮影はいつも『その時』にならないとわからない

今回は演目の他に、キャストの方々の舞台以外の姿の撮影も兼ねていました。
テレビなどで目にする以外の貴重な姿を、緊張しながらもしっかりとカメラに納めました。

今回荘内神社にもご協力いただき、神聖な場所ですがライトが見えないように設置させて頂いております。

設営から撮影までタイトなスケジュールの中でしたが、撮影メンバーの動きの良さに感動しました。
事前打ち合わせを念入りにできたことがスムーズに進行できたポイントだと思います。

この撮影のお話をいただいて、撮影方法もより深く事前勉強し直しました。
触れたことのなかった能や狂言の世界に、日本の素晴らしさを改めて発見しました。
神聖で厳かな空間にセミの声とともに、力強く響き渡る役者の声と、日本の風情が伝わる楽器の音。
撮影をしながら、この世界に入り込めてとても心地よく感じた空間でした。